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理事長あいさつ

田村 次朗

ロジャー・フィッシャー教授がハーバード大学で「交渉学」を展開しはじめたのは、1970年代後半です。いわゆる『ハーバード流交渉術』の始まりでした。
1984年、私は、幸運にもその授業を直接受けることができました。そのときの衝撃は、今でも忘れられません。知識が多いことが優秀だというそれまでの固定観念を打ち砕かれ、いかに知識を問題解決のために使いこなすかが問われる授業だったのです。これこそ本当に世の中に役立つ学問だと実感したのです。

一方、日本では、「交渉」というと「利害の奪い合い」「勝ち負けを争う戦い」の印象を持つ人も多いようです。
しかし、日本には、「三方よし」という考え方があります。日本の商業の礎を築いた近江商人が500年以上前から唱えている商業思想です。「売り手よし、買い手よし、世間よし」。皆の利害が満たされる解決点を見出すのが、商業の本質だという考え方です。なぜなら納得感のない関係は、「継続的な信頼」をいずれ損ない、中長期的には、経済的な成功を誰にももたらさないからです。

実は、この「三方よし」の考え方は、ロジャー・フィッシャー教授が起こした「交渉学」の唱える「原則立脚型交渉」のあり方とほとんど一致しています。
「交渉学」で扱う「交渉」は、決して、単なる勝ち負けを競うものではありません。むしろ、関係者の信頼関係を高次元で実現する重要なコミュニケーションの知恵と技術なのです。

日本に生まれ、フィッシャー教授に学んだ身として、「三方よしの交渉学」の研究・普及を進めることが私の使命だと感じています。
その成果を“世間”に還元すべく、2015年3月、「一般社団法人 交渉学協会」を設立いたしました。
単なる学問体系として整理するだけでなく、いかに実社会で活用されるか。
私たちが目指すのは、「交渉学」の世の中への浸透です。そのためには、「交渉学の実践家」の養成が必要不可欠です。日本での「交渉学」の研究・教育を通じて、日本の方々、ひいては世界中の方々とその理念を共有し、育み続けていきたいと思っています。

一般社団法人 交渉学協会
理事長  田村 次朗

略歴

ハーバード大学ロー・スクール修士課程、慶應義塾大学大学院法学研究科民事法学専攻博士課程。現在、慶應義塾大学法学部教授。ハーバード大学国際交渉プログラムのインターナショナル・アカデミック・アドバイザー。専門は経済法、国際経済法、および交渉学。

各省庁、公正取引委員会などの委員を歴任、また日米通商交渉、WTO(世界貿易機関)交渉、ダボス会議(世界経済フォーラム)の「交渉と紛争解決」委員会の委員等、国際交渉の舞台での経験もある。その一方で、実務教育としての「交渉学」の研究開発に取り組んでいる。

主な著作
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